​吉國 元

『来者たち』

(2018年~2021年)

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紙に色鉛筆

74点1組、サイズ可変

68×68mm(1点)、254×203mm(9点)

422×298mm(13点)、594×420mm(1点)

539×380m(45点)、539×760mm(5点)

『来者と植物』


寝床と台所を見渡す小さな部屋で、私は机に向かい絵を描いている。外は嵐だ。この部屋が私の避難場所であり、作業はそこで少しづつ進めるしかない。


私が描いているのは今は会えない人たちだ。それは生まれ育ったジンバブウェで出会った人々、子供を授かった妹家族、そして日本に住むアフリカの友人たちである。私にとって描くことは他者との邂逅を試みることであり、「来者たち」は未来からの啓示である。

昨年、数十年振りに生まれ故郷を訪れる予定であったが、ジンバブウェも世界規模のパンデミックのために国境を封鎖し、自国民以外の入国を制限していた。私は1986年に首都のハラレで生まれたが、当時の政府は国外からの長期滞在者であった両親の子に、両親がそれを望んでいたにも関わらず、私にジンバブウェの国籍を認めなかった。そのような理由で、私は「外国人」として、ジンバブウェに入国する事が適わなかった。

来者たちと共に植物を描いているのは、それが境界を超えて繁茂するからである。さらに、植物は地中深くに根を下し、生き延びるために種子を遠くへ飛ばし、太陽と水を渇望する。ジャカランダ、ハイビスカスやブーゲンビリアは、大陸を超えてアフリカと日本で見ることが出来る植物だ。私はそのような植物たちに、連続する生のざわめきと、その先に見え隠れする、やがて還るべき場所を見ようとしている。

補記:「来者」は、来客、訪ねてくる人、そして後に生まれる人という意味がある。近年では詩人の大江満雄がハンセン病者について「癩者は来者である」と書き、未来を啓示する「来るべき者」という意味を「癩者/来者」という言葉に込めた。

参考文献
木村哲也編『癩者の憲章ー大江満雄ハンセン病論集』大月書店、2008年 
木村哲也著『来者の群像』水平線、2017年